関節リウマチの薬物療法

関節リウマチの薬物療法は作用機序からみて4種類に分類できます.第一は,一般的に炎症を抑制する非ステロイド系抗炎症薬や副腎皮質ステロイド剤薬があります.いわゆる消炎鎮痛薬です.関節痛,関節の炎症症状に対する対症療法薬で,関節リウマチの経過を変える薬剤ではありません。第二は,作用機序にやや不明な点がありますが関節リウマチに特異的に作用し,効果を発揮する疾患修飾性抗リウマチ薬です.第三は,非特異的に免疫反応を抑制する免疫抑制薬です.関節リウマチにみられる異常な免疫反応を是正します。第四は,最近新しく関節リウマチの治療に使用されるようになった,特異的に炎症性サイトカインを抑制する生物学的製剤です.このように非ステロイド系抗炎症薬から生物学的製剤に向かうにつれて,より特異的に関節リウマチに作用します.第五は、細胞内伝達阻害剤といわれる一番新しい関節リウマチ治療薬で、免疫担当細胞内に働き、炎症性サイトカインの産生を抑制す内服薬です。

関節リウマチの薬物療法

関節リウマチの薬物療法は作用機序からみて4種類に分類できます.第一は,一般的に炎症を抑制する非ステロイド系抗炎症薬や副腎皮質ステロイド剤薬があります.いわゆる消炎鎮痛薬です.関節痛,関節の炎症症状に対する対症療法薬で,関節リウマチの経過を変える薬剤ではありません。第二は,作用機序にやや不明な点がありますが関節リウマチに特異的に作用し,効果を発揮する疾患修飾性抗リウマチ薬です.第三は,非特異的に免疫反応を抑制する免疫抑制薬です.関節リウマチにみられる異常な免疫反応を是正します。第四は,最近新しく関節リウマチの治療に使用されるようになった,特異的に炎症性サイトカインを抑制する生物学的製剤です.このように非ステロイド系抗炎症薬から生物学的製剤に向かうにつれて,より特異的に関節リウマチに作用します.最近では免疫抑制剤と生物学的製剤の単剤療法あるいは併用療法が推奨されています。

生物学的製剤の作用機序

関節リウマチの原因は不明ですが、関節リウマチの関節の中では、リンパ球の一つであるT細胞の異常により、関節内で炎症を起こすサイトカインという物質(TNFやIL-6)が過剰産生されています。これら炎症性サイトカインは発熱や貧血などの全身症状と関節の炎症と破壊をもたらします。生物学的製剤は、これら関節リウマチの悪化をおこす因子を抑制します。アバタセプト(オレンシア®)はT細胞を、エタネルセプト(エンブレル®)、アダリムマブ(ヒュミラ®)、セルトリズマブ・ペゴル(シムジア®)、ゴリムマブ(シンポニー®)、インフリキシマブ(レミケード®)はTNFを、トシリズマブ(アクテムラ®)はIL-6の働きを阻害することによって、関節リウマチの病状を抑えます。

生物学的製剤の比較インフリキシマブ(IFX),エタネルセプト(ETN)に引き続き,新に2008年にはIFXの完全ヒト型化された,皮下注射剤のアダリブマブ(ADA)とIL-6の働きを阻害するトシリズマブ(TCZ)が日本で認可されました。また、2010年にはT細胞の共刺激経路を阻害することによりナイーブT細胞の活性化を調節するアバタセプトが我が国5番目の生物学的製剤として認可されました。さらに、2011年9月には、ADAと同じ抗TNF阻害剤で4週に1回皮下注射するゴリムマブ(シンポニー)が使用可能になりました。2013年には、セルトリズマブ・ペゴル(シムジア)が、さらに、2013年に点滴製剤であるトシリズマブとアバタセプトの皮下注射剤が発売されています。
それぞれ7剤とも関節リウマチに著効しますが,阻害するサイトカインの種類,投与経路,投与間隔,メトトレキサート(MTX)との併用の有無などに違いがあります。有効性,有害事象においては同等と考えられます。1剤無効例に対して他の生物学的製剤にスイッチしても多くの症例で有効であることが示されています。いずれも高価な薬剤には違いありませんが,生物学的製剤の選択肢が広がったのは間違いありません。

生物学的製剤(皮下注射剤)の種類

7種類ある生物学的製剤の内、レミケードを除く6種類の生物学的製剤には皮下注射薬が準備されています。その内、アクテムラ®、オレンシア®は点滴製剤もあります。 それぞれ、作用機序、投与回数、自己注射の可否、メトトレキサート(MTX)併用の可否など違いがあります。

エタネルセプト(エンブレル®、ETN)

ETNは可溶性TNF受容体にヒトのIgGFcを細胞融合法により結合させた腫瘍壊死因子(TNFα、LTα)阻害剤です。流血中、組織中に過剰産生された可溶性TNFα、LTαを補足してその作用を阻止します。毎週2回の皮下注射を原則としています。マウスなどの蛋白成分を含まないので中和抗体が産生されにくく、メトトレキサート(MTX)を併用しなくても使用可能です。年齢、合併症、経済的負担を考えて投与量を減量することも可能です

エタネルセプト(エンブレル®)は25rを週2回あるいは50rを週1回を投与することになっています。
このスライドは、1剤以上の疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)効果不十分例における両投与方法の有効性を比較検討したものです。いずれの投与法でも対照群(プラセボ)に比較して有意に効果を発揮していますが、両投与法において差は認めませんでした。

インフリキシマブとエタネルセプトをそれぞれ変更した後の臨床評価

第1剤のTNF阻害剤(インフリキシマブ、エタネルセプト)を中止して、他のTNF阻害剤に変更した場合でも有効であることが示されています。
したがって、インフリキシマブが無効であってもエタネルセプトが有効であることを示しております。

エンブレル®(Enbrel)はメトトレキサート(MTX)を併用しない群でもMTX単独投与群に比べて関節破壊の進行を抑制します。

エタネルセプト(エンブレル®)は効果が出てきたら少量維持療法も可能

エンブレル(ETN)50mg/wとメトトレキサート(MTX)の併用療法を開始後36週後、低疾患活動性を達成した患者をそのまま継続治療群、ETN25r/週+MTX群、ETN中止しMTXの単独投与群の3群にわけ88週後の臨床症状の改善を見ています。
ETN25rに減量した群は50r継続群とほぼ、同等の改善を維持しています。

エタネルセプト(エンブレル®、ETN)の低用量投与例の検討

このスライドは自験例ですが、ETNの標準用量である週50r投与群と、半量の週25r群、1/4量の2週25r群の臨床効果(DAS28crp)を比較した結果です。それぞれの群の背景因子および中途での脱落例については検討していないので、単純には比較はできないのですが、明らかに低用量でも有効性を示す症例があることは確かです。

各生物学的製剤の国内市販後調査(PMS)報告における副作用

IFX(インフリキシマブ、レミケード)、ETN(エタネルセプト、エンブレル)、ADA(アダリムマブ、ヒュミラ)、TCZ(トシリズマブ、アクトネル)、ABT(アバタセプト、オレンシア)、GLM(ゴリムマブ、シンポニー)で治療された患者さんの内、入院を要するような重篤な副作用(AE)が出現した割合は2.4〜7.5%でした。主な重篤なAEの内訳は、ほとんどが、一般の感染症で、他の抗リウマチ薬にみられるような血液、肝、腎障害など全身の諸臓器障害の出現が極端に少ないということです。
感染症対策を十分に行うことで、生物学的製剤治療の副作用を抑えることが可能と言えます。

エタネルセプト(エンブレル®)の有害事象発現は疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)による有害事象の発現率と同等か低いという発表です。

エタネルセプト(エンブレル®,ETN)と妊娠

妊娠を希望する女性、妊娠および授乳中の女性は、出来るだけ生物学的製剤の使用を控えることが推奨されています。免疫抑制剤や生物学的製剤に関しては妊娠、出産、授乳に関して安全性が証明されていないためです。
しかし、エビデンスは乏しいのですが、生物学的製剤の内でもETNは比較的安全であるというデータが蓄積されてきています。現時点では、ETNの投与の必要性とリスクを加味して投与をするかどうか決めなくてはならないと思います。

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