本日のメニューを示します。
ます、「臨床症状」について話します。

関節リウマチ(RA)の進展を示しました。
左の図から順番に、
正常な関節、
関節炎が出現し骨や軟骨の一部が壊れた状態となった関節
骨や軟骨がさらに破壊された関節
最後に関節が癒合した状態

足指のレントゲン写真です。
左側が異常のない方です。
右側が関節リウマチ患者様です。関節の骨が壊れているのがわかります。
関節リウマチは関節が痛くなる病気ですが、それだけでなく、骨や軟骨が壊れることが特徴です。
関節リウマチの治療は、関節の痛みをとるだけでなく、骨や軟骨の破壊を防ぐことも目標となります。

本日のメニューを示します。
ます、「臨床症状」について話します。

「検査の略語」を示しました。

「ACR / EULARによるRAの分類基進(2010年)」を示しました。
ACRはアメリカリウマチ学会、EULARはヨーロッパリウマチ学会の略です。
関節リウマチの診断に世界中で用いられている基準です。
検査としてはRF,抗CCP抗体、 CRP,赤沈値が用いられています。

抗CCP抗体:
関節リウマチの早期診断、関節破壊予測などのマーカーとして重視されており、国際的な診断基準でも採用されている。
RF;
関節リウマチの診断と経過をみる際に最もよく利用される検査の一つであり、抗CCP抗体とともに国際的な診断基準でも重視されている。
CRP: 
急性炎症反応物質で関節リウマチでは関節炎の評価の一つとして用いられている。しかし、関節リウマチ以外の感染症などの炎症性疾患でも上昇するため、その評価には注意を要する。
ESR:
急性、慢性の炎症を反映する検査である。関節リウマチではCRPとともに関節炎の評価の一つとして用いられている。
MMP3:
CRPやESRなどの急性炎症反応より関節破壊を正確に反映するとされている。

本日のメニューを示します。
ます、「臨床症状」について話します。

早期から関節破壊が進行
関節リウマチ患者さんの関節破壊は,これまでゆっくりと出現すると考えられていました.しかし,最近調査では,発症初期,しかも発症2年以内に急激に進行することがわかってきました.関節破壊を防止するためには,発症初期から強力な治療を行い関節破壊を抑えなくてはなりません.

関節リウマチ患者様は身体が不自由になることが多くあります。
その原因について検討したグラフです。
骨の破壊が最も身体の不自由さに影響を与えていることがわかります。
不自由なく生活するためには、関節の痛みをとることも大切ですが、最も大事なことは骨の破壊を防ぐことです。

このスライドは、リウマチになって1年以内に上荒屋クリニックを受診した患者さんの初診時と5年後に全身の関節のレントゲンをとって、いずれかの関節に骨破壊を認める患者のことを示しました。
初診時に骨破壊のある患者さんは48.5%と約半数に達しました。
その患者様の5年後の骨破壊の状態を示しました。
骨破壊のある症例は94.6%と増加していました。
これらは生物学的製剤が使用される前のデータです。
すなわち、生物学的製剤以外の薬では骨破壊を抑えることが極めて困難であることを示しています。

5年後、骨破壊関節数とRA発症年の関係を示します。
棒グラフは各年の平均の骨破壊関節数を示しました。
86年から99年の間に平均5個程度の骨破壊関節数が減少したことになります。

海外のデータですが、生物学的製剤であるエンブレルを使用後の身体機能の推移を示しました。
早期にエンブレルを使用する方が8年後も身体機能の状態がよくなることを示しています。

本日のメニューを示します。
ます、「臨床症状」について話します。

「リウマチが妊娠に与える影響」を示しました。

「リウマチで使う薬と妊娠」を示しました。

「MTX患者が妊娠計画を避けるべき期間」を示しました。

本日のメニューを示します。
ます、「臨床症状」について話します。

関節リウマチの発症仮説を表した図です。
ある種の遺伝子がある方が、煙草を吸うとシトルリン化蛋白が合成され、それにより抗CCP抗体が産生され。
免疫反応が誘発され、関節リウマチが発症する 以上のような考え方が有力視されています。
この考え方は煙草以外の化学物質やでもありうると考えられています。
また、煙草とともに注目されているのが、歯周炎で、肺ではなく歯の周囲でどうようなことが起こっていると考える説があります。
遺伝因子の関与は20-30%といわれています。

レコメンデーションの3つの包括的原則です。コストも強く意識されています。

レコメンデーション 14の提言の前半です。

レコメンデーション 14の提言の後半です。

これは、その新しいレコメンデーションの治療アルゴリズムですが、日本向けにアレンジしています。
RAと診断し、禁忌がなければ全てMTXとしています。今回の改訂ではMTXの単剤より他のDMARDとの併用もより積極的に進められています。
MTXが使えない場合、レコメンデーションではサラゾスルファピリジンとレフルノミドを使いますが、日本ではレフルノミドは慎重に使用する必要があります。
日本では、他にブシラミンなど、タクロリムス,イグラチモドがDMARDsの候補となるかと思われます。
プレドニゾロンは今回のレコメンデーションで、初期治療の際の有用性が追認され、またプレドニンで10mg程度を6ヵ月でtaper offという具体的な目安も初めて出されましたが、ここは議論のかなり割れたところのようです。
それから前回のレコメンデーションでは、3-6ヵ月以内に寛解もしくは低疾患活動性に達しない場合は次にフェーズに進むとなっていましたが、今回は6ヵ月とされています。ただし全く効果が見られない場合は3ヵ月でもフェーズUに進みます。

ここでは予後不良因子の有無によって、分かれますが、予後不良因子がある場合生物学的製剤の導入を検討することになります。今回の特徴は、TNF阻害薬と、アバタセプト(オレンシア)、トシリズマブ(アクテムラ)が同格となり、どれをバイオのファーストチョイスにしても良くなりました。
予後不良因子のない場合second DMARDとしては、先ほどと同じく日本では他にこのような薬剤も候補となります。バイオ製剤を使用し、寛解に誘導できた場合、バイオフリーにチャレンジすることができます。最近では、完全なバイオフリーは難しくとも、バイオーホリデイ、ドラッグホリデイなど、寛解を保ちながら休薬を一定期間置くという考えも出てきています。

残念ながらフェーズUでも治療目標に達せなかった場合はフェーズVに進みます。
ここで注意はリツキシマブは日本ではRAに使えないこと、またバイオシミラーについて、レコメンデーションではbsDMARD(biosimilar DMARD)としてbiologic DMARDsと別のカテゴリーとしながらも、これを認めたことです。ちなみに、2013年6月の学会後直後の6月28日にEMA(欧州医薬品庁)がレミケードの後発品を2剤認めました。米国のFDA(食品医薬品局)はまた認めておりません。
逆にトファシティ二ブ(ゼルヤンツ)については、ヨーロッパでは認可されず、米国や日本(ロシア、スイス)では認可されています。トファシチニブはtargeted synthetic DMARDとして、一般的なDMARDとは別カテゴリーで特別な扱いとなっています。バイオ製剤が1剤できれば2剤使ったあとに推奨されています。TNF阻害薬以外のバイオが効かなかった場合次のゼルヤンツの効果や、ゼルヤンツの効果がなかった場合の次のバイオの効果についてはエビデンスがありません。帯状疱疹が多いことや、高額なことより、risk/benefitの点よりEMAより認可されませんでした。レコメンデーションでは、悪性腫瘍の増加はないとされましたが、今後の長期のデータも待たれます。

本日のメニューを示しました。
まず「遅行性抗リウマチ薬(DMARD)の種類」について話します。

遅効性抗リウマチ薬の特徴をスライドに示しました。
・遅効性だがリウマチの進行を抑える可能性がある
・強い副作用はあるが、薬の特性を十分知って、 医師、看護婦、薬剤師etc.と患者(家族)が協力すれば、かなり安全に使える

日本で関節リウマチに使用が認められている遅効性抗リウマチ薬の種類の一覧です。
左側が一般名で、右側が商品名です。
商品名が違っても一般名が同じなら同じ薬です。
みなさんの手には右側の商品名のものが薬局から渡されます。
一般名が12種類あるので、日本で使用されている遅効性抗リウマチ薬は12種類あることになります。

城北病院及び上荒屋クリニック外来通院の関節リウマチ患者893名の分析したものを示しました。
メトトレキサートが最も多く使用されていました。
サラゾスルファピリジン以下はメトトレキサート以外の遅行性抗リウマチ薬です。

本日のメニューを示しました。
まず「遅行性抗リウマチ薬(DMARD)の種類」について話します。

MTXは用量依存的にRAに対して治療効果を発揮する
メトトレキサート(Methotrexate、MTX)は20mg/wまで用量を増加させると、用量依存的に疼痛関節数(Ritchie Index)、患者さんの疼痛程度(VAS)、赤沈(ESR)、CRPを改善させます。
わが国では、現在、MTXは16mg/wまで増量が認められています。

スライドに示したのは、メトトレキサートを18ヶ月投与した時の骨破壊防止効果です。
左図を見てください。縦軸は上にいく程関節破壊が進行していることを示しています。 白丸は薬でないものを飲んでいた患者様で、緑の三角がメトトレキサートを飲んでいた患者様です。
メトトレキサートを飲んでいる患者様の方が関節破壊が少ないことがわかります。 右上方図は抗CCP抗体が陽性の患者様の場合です。
薬でないものを飲んでいた患者様に比べて、メトトレキサートを飲んでいた患者様の方が関節破壊が抑えれていることがわかります。

メトトレキサート(リウマトレックス)
メトトレキサート(MTX)は優れた有効性,副作用の出現に比して効果が上回る,継続率が高い,骨破壊の抑制効果がある程度ある,生命予後改善効果がることなどにより,現在では関節リウマチ(RA)治療の中心的薬剤になっています.また,他の疾患修飾性抗リウマチ薬や生物学的製剤との併用薬療法における基本薬(アンカードラッグ)に位置づけられています.
これまで、日本では、MTXの投与量が1週間に8mgまでと、欧米での投与量の半量以下に制限されていました。そのため,MTXの充分な薬効を引き出す前に生物学的製剤などの他剤に変更せざるを得ないケースが多く存在していました。2011年2月、日本リウマチ学会や日本リウマチ友の会の活動により、日本でも1週間に16mgまでの増量が認められました。また、これまでは、他の疾患修飾性抗リウマチ薬に無効な場合にMTXを使用することとされていましたが、予後不良例には最初からMTXを使用することが認められました。

次にEULAR(ヨーロッパリウマチ学会)が推奨する治療戦略を示しました。
関節リウマチ(RA)と診断されたら、メトトレキサート(MTX)に禁忌がなければMTXを使用することになります。

次に「MTXの飲み方と服用時の注意事項」について話します。

メトトレキサート(MTX)の投与スケジュール
MTX(リウマトレックス)の週4mg(2カプセル),6mg(3カプセル),8mg(4カプセル)での投与スケジュール例です。12時間毎に週3回に分けて内服する例をあげていますが、週1回投与や週2回投与法もあり、現状ではまだ、統一されていません。

メトトレキサートの副作用
メトトレキサート(MTX)の副作用は多くありますが,投与量に関係したものと投与量に無関係に出現するものがあります。また,たいていの副作用の発現時期は投与開始あるいは増量後6ヵ月以内が多いので,その時期には毎月,副作用検査をされた方がよいでしょう.葉酸(フォリアミン)を補充することにより副作用の発現を防げるものもあります。

メトトレキサート(リウマトレックス?)を服用している時にスライドのような症状が出た場合はリウマチ科外来まで連絡をお願いします。
連絡がつかない場合には上記症状が強い場合は、連絡がつくまでメトトレキサートの服用を中止してください。

メトトレキサート(リウマトレックス?)を安全に服用していただくためのポイントをスライドにまとめました。

次に「その他の遅行性抗リウマチ薬(DMARD)」について話します。

まず、2012年9月から発売されたイグラチモドから話します。
スライドはイグラチモドの関節炎を抑える有効性を示しています。
プレセボ(偽薬)に比べて明らかに効果がありました。

先程示したグラフです。
メトトレキサート以外のDMARDsで使用されている率が比較的多いサラゾスルファピリジン、タクロリムス、ブレヂィニン、金チオオリンゴ酸(シオゾール)の解説をします。

サラゾスルファピリジンは、日本リウマチ財団発行が発行した「厚生労働省研究班:関節リウマチの診療マニュアル」では推奨Aとなっており、高い評価を得ている薬です。メトトレキセートと併用して使用されることも多い薬です。

プログラフの効果を示します。
プログラフ投与後、関節炎、炎症反応ともに改善しています。

ブレディニン(MZR)有効例を示します。
ブレディニン投与後プレドニゾロンが10mg/日から3mg/日に減量できています。

金沢リハビリテーション(現上荒屋クリニック)で2000年頃に私が調べた薬剤継続率です。
48か月後に最も使用されていたのはシオゾール(GST)でした。1週間から4週間に1回注射をするために病院にこなければいけませんが、有効な方には長期間使用されている薬です。

生物学的製剤の内、現在日本で使用可能なTNF阻害剤です。

TNF阻害剤以外の生物学的製剤はトシリズマブとアバタセプトの2剤です。
いずれも2013年秋に皮下注製剤も使用可能となりました。

時間の制限もあり、個々の生物学的製剤の特徴や相互比較は行いませんが、TNF阻害薬のアダリムマブと、非TNF阻害薬のアバタセプトを厳密に比較した大規模試験の2年間の結果が最近示されており、提示します。(AMPLE試験)
MTX効果不十分、発症5年以内、バイオナイーブのヒュミラ+MTX 328名、 オレンシア+MTX 318名を比較。2年後のDAS寛解率を見たところ、寛解率はともに50%強で有意差を認めず。低疾患活動性到達率も有意差を認めませんでした。

DAS28以外のCDAI, SDAI,ブーリアンの寛解基準についても両群で差は認めませんでした。

シャープスコアにて関節破壊の進行の抑制を見ました。一年間あたり0.5の変化以下ならほぼ関節破壊の進行のない画像的寛解と言えますが、ほぼ両群とも画像的寛解に到達しており、有意差は認めませんでした。

有害事象に関しましては、生物学的製剤共通の特徴として重篤な感染症も含めた感染症が比較的多いことが挙げられます。
AMPLE試験では両群に差を認めませんでした。一方、局所部位反応や、副作用による中止はヒュミラが多く、自己免疫疾患の発症はオレンシアの方が有意差をもって多いという結果でした。

これまでの生物学的製剤が主に細胞表面の受容体に作用したことが多かったのに対して、シグナル伝達阻害剤は細胞内領域に作用して効果を現します。
JAK-STAT系を抑制し、サイトカインの生成や細胞の増殖を抑制します。
シグナル伝達阻害剤は前述のレコメンデーションの中では、これまで汎用されたDMARDと区別し、tsDMARD ( targeted synthetic DMARD;分子標的型合成DMARD)と命名され、bDMARD (biological DMARD: 生物学的DMARD)とも違うカテゴリーの薬剤とされています。

シグナル伝達阻害剤で、現在唯一保険適応がある、経口ジャック阻害剤のトファシティマブ(ゼルヤンツ)のデータです。2013年10月の米国リウマチ学会で5年間のデータが報告されています。生物学的製剤に匹敵する有効性が示されています。

2013年10月のACRにて報告されました、データです。
トファシチニブでは、プラセボ、アダリムマブより帯状疱疹が有意に多くなっていますので、感染症の中でも特に注意が必要です。

同じく2013年10月のACRにて報告されました、データです。
悪性腫瘍発生率については、プラセボ、ヒュミラと差はありませんでしたが、引き続き慎重に長期のデータを見ると良いでしょう。

寛解とは
病気が完治しているかどうかは不明であるが、症状が落ち着いており進行が見られない状態をいいます。
関節リウマチの場合でも様々な寛解状態があります。

生物学的製剤による寛解達成率
スライドはエタネルセプト(エンブレル?)による寛解達成率を示しておりますが。投与1年で30%近いリウマチ患者さんが臨床的寛解を達成しています。他の生物学的製剤でも同様の成績が報告されています。

関節リウマチの臨床経過
関節リウマチの病勢は関節炎にて判断します。具体的には、関節腫脹やCRP、赤沈などの炎症反応で判断します。
関節リウマチの病勢を抑えるのは薬物療法にて改善することができます。
しかし、関節炎が持続すれば、関節破壊が生じることになります。関節リウマチの病勢は薬物療法にて良くります。関節炎が全くなくなった状態を寛解と呼びます。再発すれば再燃です。一方、一旦、関節破壊が生じるともう、元には戻りません。壊れた関節は元に戻らないのです。それで、関節リウマチの病勢が治っていても関節破壊による機能障害、運動時の疼痛は残ってしまいます。

関節リウマチの治療目標と治療手段
寛解といってもいろいろな寛解があります。下段にいくほど理想的な寛解といえます。
臨床的寛解とは、関節リウマチによる関節炎(滑膜炎)が消退している状態を示し、Treat to Target(目標を達成に向けた治療)で示されているように、早期に寛解あるいは低疾患活動性に到達できるよう、メトトレキサート(MTX)をはじめとするDMARDs(疾患修飾性抗リウマチ薬)や生物学的製剤を使用します。
画像的寛解とは、関節炎が治まっていても、関節破壊が進行する場合があります。生物学的製剤は関節破壊の進行を阻止する能力のある薬剤です。関節破壊の進行が止まっている状態が画像的寛解です。
機能的寛解とは、関節の機能、例えば、日常の生活動作が改善、あるいは、悪化が見られない状態を指します。そのためには、発症早期から積極的な治療が必要です。
薬剤フリー寛解とは、リウマチ治療薬を中止しても、上記3つの寛解が維持されている状態です。本当の意味での寛解ということが言えます。薬剤フリー寛解を得るためには、発症早期に生物学的製剤にて治療することによって可能となります。
最後に、関節リウマチが寛解しても、健常人と同様に社会生活が送れることが重要です。社会的寛解です。社会的寛解を得るためには、広義のリハビリテーション、ユニバーサルデザイン社会の実現が重要です。

インフリキシマブ(レミケード?)は中止できるのか?
このスライドは海外の臨床試験成績(BeSt試験)ですが、レミケード(IFX)投与5年後には、58%の患者さんがIFXを中止でき、その内、19%の患者さんが併用しているメトトレキサート(MTX)も中止(ドラッグ・フリー)できています。

インフリキシマブ(レミケード?)中止の可能性
わが国で行われたレミケード休薬試験、RRR研究結果では、インフリキシマブ投与後24週以上DAS28-ESRが3.2以下の低疾患活動性を獲得した患者さんにインフリキシマブを中止したところ、52週後においても55%の患者さんが低疾患活動性を維持できることがわかりました。

生物学的製剤離脱の可能性
IFX(レミケード?)、ETN(エンブレル?)、TCZ(アクトネル?)が寛解のため投与を中止した場合、どれだけ、寛解状態が維持できるかをみた当院の治療成績です。レミケードは寛解にて投与中止後6か月では約60%、12か月では40数パーセントの患者さんが投与中止が持続できています。約半数の患者さんが1年間、約1/4の患者さんが2年間投与を中止できるという結果でした。
また、ETN,TCZではIFXに比べて投与中止できる患者さんの割合が少ないという結果でした。

骨粗鬆症は骨が脆く鬆が入り骨折しやすくなることです。骨の強さは骨密度だけでなく骨質も重要であることがわかってきました。骨折を予防することが一番の目的です。

骨は絶えず壊され、作り替えられています。骨粗鬆症はそのバランスがくずれ、骨が脆くなる病気です。

骨粗鬆症になりやすい人は高齢、やせている女性、運動してこなかった人、カルシウム摂取不足等がいわれています。骨粗鬆症を合併する病気の代表は関節リウマチ、糖尿病、慢性腎臓病、副甲状腺機能亢進症があげられます。治療薬でステロイドを使用していることも骨粗鬆症になる危険が大きくなります

骨粗鬆症で骨折しやいところは手の付け根(橈骨遠位端)、肩の付け根(上腕骨頸部)、足の付け根(大腿骨頸部)、背骨(胸椎、腰椎)です。特に大腿骨骨折は寝たきりの原因になる骨折です。
関節リウマチの方はほかにも肋骨や骨盤、膝の下、踵、足趾等の場所が容易に骨折します。

関節リウマチの骨粗鬆症はその病期や治療に応じて骨粗鬆症が発生することが知られています。また関節近くで起きる骨萎縮と全身に起きる骨粗鬆症があります。
局所には RAの初期にみとめられ、罹患関節の滑膜細胞、マクロファージそしてリンパ球らが産生するインターロイキン-1、インターロイキン-6、プロスタグランディンE2などの生理活性物質が、骨をこわす細胞(破骨細胞)を活性化して、罹患関節近傍の骨の密度を低下させるといわれます(傍関節性骨粗鬆症)。
全身性には  ステロイド、炎症、不動、やせ、閉経などが問題になり進行します。
ステロイド性の骨粗鬆症の好発部位は、海綿骨に富んだ脊椎椎体であり、軽微な外力で脊椎圧迫骨折が発生します。

RAの発症モデルです。活性化したT細胞から炎症性サイトカイン(TNFα、IL-1,IL-6など)が産生されることで滑膜が増殖し関節リウマチの活動性が高まります。そこからRANKLが発現するほかに、直接T細胞からもRANKLが発現し、骨をこわす細胞(破骨細胞)が活性化してされ、腫れた関節近傍の骨の密度を低下させます。

骨量測定の方法は主に3つあります。DXA法は腰椎、股関節の骨密度を測定することが推奨されています。診療所などでは橈骨遠位の骨密度を測ります。MD法はレントゲンで第2中手骨の濃度、皮質の厚みを測ります。超音波法はどこにも持ち運べる手軽さがあり踵の骨を測ります。

病院での骨質測定は腰椎および股関節の骨密度を測定します。橈骨の骨密度測定はコンパクトで扱いは容易なため診療所で行われています。
診断および治療効果を見るために定期的に測定することが重要です。

DXAの結果です。YAM値(若年成年の骨密度との比較)で80%以上は正常、70?80%骨量減少、70%以下は骨粗鬆症と判定されます。

骨粗鬆症の中には高回転型と低回転型があります。採血検査で骨代謝マーカーを調べることでどちらの方になるかがわかります。骨吸収マーカーが高いものは骨破壊を押さえる薬が効果的なことがわかります。
レントゲン検査では直接骨の変形、皮質の薄さ等がわかります。

現在国内で承認されている骨粗鬆症の薬は、大きく3つのタイプに分類できます。1つは、カルシムやビタミン類のように、足りない栄養素をおぎなうものです。もう1つは、女性ホルモンなどのように、骨が溶かされるのをおさえて骨量を増やすものです。現在はビスフォスフォネートがもっとも推奨され、中心的な治療薬になっていますが、最近は骨新生を促すタイプの治療薬が出てきて、骨密度の改善が著しいとの報告がされています。ただし自己注射で2年間、毎日注射するなど誰でも手軽に行うという訳にはいかないようです。

関節リウマチの炎症が骨粗鬆症を悪化させるため、関節リウマチそのものをしっかりコントロールすることは骨粗鬆症にならないためにも重要です。関節リウマチの治療薬はステロイド以外は骨粗鬆症を悪化させません。ステロイドを長期に使用すると骨粗鬆症を悪化させるため、できるだけ少量、短期間のみ使うことが必要です。
関節リウマチ治療を受けるときは積極的に骨粗鬆症を早期にみつけ、早期から骨粗鬆症対策をすることも重要です。

城北病院作業療法士の小池です。
私からは「痛みのない家庭生活の過ごし方」についてお話しさせていただきます。

まず痛みの原因と対策にいて、リハビリテーションの観点からお話しします。
関節の痛みは大きく2つに分けられます。まずリウマチの炎症そのものによる痛みと、関節面の不適合や関節周囲の筋、靱帯の痛みです。
炎症による痛みに対しては、炎症を抑えることが必要です。これには薬物療法のほか、痛みのある関節を動かないように固定することも必要です。固定により炎症を抑える効果もあります。
多くの患者さんが訴える痛みは、薬物療法の進歩した現在、多くの場合が、下の、関節面の不適合や関節周囲の筋、靱帯の痛みです。このような場合に無理をして機械的ストレスを増加させると、骨や軟骨の破壊は進行し、さらに痛みが強くなるという悪循環となります。
これに対して、私たち作業療法士や理学療法士は、その人の痛みの具合や生活や仕事の状況をお聞きし、関節保護動作、運動療法、装具療法、物理療法などを組み合わせて対応します。

「痛みのない生活」のために必要なことは次の3つに集約されます。
・無理をしない
・やり方を変える
・人を使う

近年、生物学的製剤が普及して、患者さんの状況は大きく変わりました。
これは患者さん自身に日常生活についての調査を行った結果を示しています。患者さんに質問に答えていただき、その回答を集計すると、「移動」「歩行」「手指」といった12の項目について、点数が付けられます。点数が小さいほど良い状態を表します。この調査結果を、各項目について、1993年、2006年、2012年と並べて示しています。
「痛み」の項目を見ると、最近のものほど値が小さい、つまり状態が良くなっていることが分かります。そして、良くなっているのは「痛み」だけでなく、「移動」「歩行」「手指」「上肢」「身辺」「家事」「緊張」「気分」といった多くの項目で改善がみられています。
生物学的製剤がうまく合い、痛みが楽になった方も多いかと思います。

痛みが軽減して、楽に動けるようになることは素晴らしいことですが、動きすぎや無理な動作をしていないでしょうか?関節に負担をかけるような「動きすぎ」「無理な動き」は「関節のオーバーユース」と呼ばれ、気をつける必要があります。
右の表は、さきほど調査した2006年と2012年の間で、関節破壊の進行についてレントゲンで調査した結果です。生物学的製剤を使用していた55名の患者さんのうち13名が、生物学的製剤を使っていなかった患者さんでは18名中1名が、6年後には関節破壊が進行していました。患者さん合計では、67名中14名、20.9%が悪化していたということになります。

では関節機能を維持するためにはどうしたらよいでしょう。 一番の基本は、関節を守りながら動かすという考え方で、このような動作を関節保護動作と呼んでいます。
原則は次の10項目です。
1.痛みに気を配る
2.休息と仕事のバランスをとる
3.筋力と関節の動きを維持する
4.努力を軽減する
5.変形を生じる関節の使い方を避ける
6.もっとも強い、大きな関節を使う
7.関節を安定した位置で使う
8.長時間にわたって同じ姿勢を続けない
9.直ちに中止できない作業は避ける
10.自助具やスプリントの使用
大切なのは、痛みが出る前から取り入れることです。関節破壊が進行したり、変形が起きてしまってからでは効果は小さいものになります。
具体的にどのようにすればいいか、少し詳しくお話ししますので、少しずつご自分の生活に取り入れるようにしてください。

手の指や手首、足の指や足首の関節は一つ一つが小さいため、負担がかかると影響が出やすい関節です。
まず手のひら、腕を使う、ということです。椅子から立ち上がるとき、何気なく握りこぶしを作って、それで押すようにして立っている方を見かけます。それはもともとあまり強くない指の関節に外から力を加えることになってしまいます。ですからそうではなくて、手を広げて手のひらを使う、また腕を使うという使い方にすると関節にも優しくなります。 また右の図には逆手を使いましょうということが書いてあります。タンスなども指で引っ張るのでなく、手のひら全体を入れて引くと、腕全体で引くことができます。さきほどの「変形を生じる関節の使い方を避ける」「強く大きな関節を使う」ということの実践例です。

食器やナベ、フライパンなど、重い物をもつときは両手を使うようにしましょう。また両手でもつ場合も、指でぶら下げるのでなく、ミトンなどを使って手全体で持つようにすると少し楽になるかと思います。
ビンのふたを開ける時は、指を使うと、指の小さな関節一つ一つに負担がかかるので、手のひらを使って開ける方法もよいと思います。

足の指の動きはあまり普段気にかけて見ることは少ないと思いますが、日常のさまざまな場面で意外に無理がかかっています。
まず階段ですが、一段上るごとに足指の関節はこんなにも曲げられています。これを避けるためには、まずできるなら階段の利用を控えること、段差を解消することです。手すりがあればそれを使うことで、足にかかる負担を軽くすることができます。また、ひと足ひと足で次々上っていくのではなく、一段上ったら一度足をそろえるようにしたり(2足1段)、横歩きで昇降するようにすると、このような足指を強く曲げずに済みます。

他にも、背伸びをして高いところに置いてある物を取ったり、長時間しゃがみこむ姿勢をとるのも、足指に負担をかけていることになります。
背伸びをせずにすむようにするためには、高い所に物を置かない、置き場所を低くする。踏み台を利用すること。
しゃがみこまないようにするためには、リーチャーやモップなどの長柄の付いた掃除用具を用いること、しゃがまずに机の上などで作業をするようにします。

道具を代える、あるいは調整するという方法もあります。できないことやし難いことをしやすくするための道具を「自助具」と呼びます。用途に応じて多くの物がありますが、ここではいくつか例を示します。
UDグリップ包丁は、持ち手の向きや角度を、自分の使いやすいように変えることができる包丁です。カンやペットボトルのフタを開けるオープナーも、最近はいろいろなものが市販されています。右側は作業療法士が作製しているものです。上は補高便座、下は補高座布団で、日常的に使用するトイレやイスを立ち座りし易い高さにします。

次は装具療法について述べます。
ここでは手首の装具を3つ例示しました。上は市販のサポーター、指先からはめるタイプのもので保温効果を謳っているものもあります。
2つめは当院の作業療法士が作製しているものです。これは巻いたあとに締めるタイプのもので、関節を安定させる効果があります。これらはいずれも布製で、関節の固定は弱いです。
下はアルミの板が中に入っており、手首の関節が曲がらないように固定します。
上2つの布製のものは、運動時に軽い痛みがあったり力が入りにくい時に使用します。
しかし関節の固定力は弱いので、安静時痛があるなど急性炎症がある場合には、関節をしっかり固定することができる下のタイプを使うようにします。

これはしばらく前ですが、この布製の装具を作った患者さんに、「装具を着けている理由」を伺った結果です。
「何となく安心する」と漠然とした理由で着けていた患者さんが95%もいらっしゃいました。また、「手首の保護」や「変形予防」といった、布製装具には不適切な効果を期待している方も少なくない結果となりました。

したがって、装具の中でもサポーターについては注意が必要と考えています。
サポーターを着けると、多くの場合、運動時の疼痛が軽減し、握力が改善するので、動作はしやすくなります。
しかし同時に、関節を守るものではないので、楽になったからといって使いすぎは禁物です。また血行障害が起きたり、長時間の装着によりその部分の筋力が低下することもあります。
痛みの状況に応じてうまく使うことが大切で、使うことと当時に、先ほどお話しした「関節保護」に注意することが必要になります。

最近当院や上荒屋クリニックで取り入れている治療の一つに、「包帯療法」があります。毎晩寝るときに包帯を巻いて寝る、という方法で、足指の裏の痛みや外反母趾に対して効果を期待できます。

身体の機能を維持、改善するためには、身体を動かすことも大切です。身体の動きが少なくなると機能が衰え、ますます動きにくくなるという悪循環になります。
運動は適切であることが大事で、適切な運動が機能を改善します。
これは手の指が十分曲がらなくなった患者さんに、家庭で運動を続けていただいた結果を示しています。
運動前は左側で、指を曲げたときに指先と手のひらの間が、平均3.5cm空いていました。運動後は右側で、隙間は平均1cmとなりました。

これは私たち石川民医連で作成したリウマチ体操です。だいぶ前から使っているのでご存じの方も多いかと思います。
痛めやすい首や手首を除き、ほとんど全身の関節を十分動かし、関節の運動制限を予防できるように作ってあります。足については、筋力をつける運動も載せています。

体操を行う場合は以下の点に注意してください。
・ゆっくり行う
・動かせるいっぱいの所まで、各方向に5〜10回動かす
・1〜2時間後に痛みが残らないように
・体操の後は休憩を

最後に、痛みに直接対処する方法として物理療法についてふれます。
物理療法とは、皮膚を介して光・水・電気、温熱、寒冷などの物理的刺激を生体組織に与え、生理的な潜在能力(自然治癒力)を引き出す治療の総称で、温めたり冷やしたり、電気や光を当てるものがあります。期待される効果として以下のものがあげられます。
・循環の促進
・局所新陳代謝の促進
・疼痛の軽減、筋スパズムの軽減
・組織の粘弾性の変化

家庭でできる温熱療法をいくつかご紹介します。
入浴も温熱療法の一つで、38?39℃の少しぬるめの湯に20分つかることで、副交感神経が働き、身体がリラックスし、自律神経のバランスを整えることができます。
また家庭でできるホットパックとして、湯たんぽを使う方法や、電子レンジで温めることのできるものが市販されています。ただし、炎症の急性期や皮膚に疾患がある場合などは温めることは禁忌になりますのでご注意ください。

一言でまとめると、無理をしないで体を動かすことが大切です。
ここでお話した内容は、リハビリテーション科で対応させていただきます。患者さんの身体の状態と生活の状況などをお聞きし、その人の状態を改善するために適した方法をご提案します。
お困りのことや聞きたいことがあれば、主治医にご相談の上、指示をもらってリハビリテーション科までお越し下さい。

関節リウマチはどのような手術があるのでしょうか
手術で関節リウマチの炎症を治して、関節破壊を予防するものとして、滑膜切除術があります。これは腫れて痛みの激しい関節に対してその原因の増殖した滑膜を切除する手術です。以前はいろいろの関節で行われることがありましたが、薬物治療でかなり滑膜炎がコントロールできるようになり、現在では関節鏡を用いて、小さな傷で行う手術が腫瘤になっており、膝関節など限られた部位になっています。
壊れた機能を再建する手術としては、人工関節置換術、関節固定術、関節形成術や腱断裂に対して腱形成術などがおこなわれます。

生物学的製剤の出現で関節リウマチの手術が変わってきました。
炎症がよく治るようになったためひどい関節破壊が少なくなっています。そのため人工関節の手術が減少しています。その反面細かな手指の関節や足趾の手術が見直されてきました。またどうしてもとれない滑膜炎の手術も時々行われています。
免疫の力を押さえる治療のため今まで以上に感染対策が重要になっています。

城北病院では1990年代に人工関節手術が盛んに行われ、特に膝については年間40件を超えたときもあリました。2000年に入り、膝、股関節の人工関節置換術は減少傾向を見せています。生物学的製剤による関節リウマチのコントロールが良好になり、痛み軽減、骨破壊が減少したためと考えられます。しかし肘に関しては大きな変動がなく、歩行機能改善が内科的治療で得られる反面、上肢機能、日常生活の障害がまだ問題になっています。手指の障害や足趾変形などに手術の比重が移っている事をうかがわせます。

関節リウマチの手術で最も多い手術です。痛みのため歩行困難な人も1ヶ月後には安定して歩けるようになります。いろいろの機種があり、再置換用のものも多く開発されています。
一カ所の手術ならば1ヶ月程度で退院となります。

人工股関節は最も昔からおこなわれています。そのためさまざまな改良がなされて多くの機種があります。最近は小侵襲で皮切も小さな傷でおこなえるようになっています。
自己血をあらかじめ貯血するようになり、ほとんど輸血が不要になっています。

肘の人工関節をうける人はほとんどが関節リウマチで肘が破壊されたひとです。
痛みのためにほとんど動かせなくなったり、関節拘縮や強直で曲げられなくなって顔までとどかなくなったり、ぐらぐらと動揺する肘が適応になります。

人工関節は他に肩、足関節、指の関節、足趾の関節などに行う事ができますが、まだ小数の症例に留まっています。右の写真は足の拇趾に入れたシリコン性の人工関節です。左は蝶番のように連結して動く肘の人工関節です。

破壊してしまった関節が、生物学的治療によって滑膜炎が治まった結果、骨浸食していた箇所が修復される事があります。ただしこれは手指や足趾の小関節に見られますが、大きな関節である膝や股関節では見られません

関節リウマチの患者さんでよくみられる変形に手指や足部の変形があります。特に足趾の変形は足底に胼胝(たこ)を作り、痛みのため歩けなくなったり、靴が履けなくなったりします。足趾形成術とはそんな曲がった足趾を治し、胼胝などができないようにする手術です。
手術は以前は脱臼して変形している中足骨の一部を切除して矯正します。術後1ヶ月ほどは不自由ですが、その後は普通の靴も履けるようになり歩きやすくなります。

小さな関節は骨破壊が軽度な場合修復する症例があります。また滑膜炎が生物学的製剤にて非常によく鎮静するようになったため、関節切除せず、骨頭を温存する手術を行うようになってきました。
従来切除すると足が短縮したり指先の力が入らないなどの欠点がありましたが、その欠点が改善されるようになってきています。

関節リウマチの代表的な手術はほかに関節固定術、腱移植、移行術があります

人工関節置換術が発達したため、関節固定術をおこなう関節は限れます。代表は足関節固定術で、ほかには手関節、頚椎固定術がおこなわれています。
足関節固定は痛みのため体重をかけられず、歩行に支障をきたすときにおこなわれています。しっかりと骨癒合すると、痛みなく、人工関節よりも長期に骨破壊の進行がなく安定しており、歩行が楽になります。

母指の関節が脱臼してぐらぐらしてしまった症例です。関節面を削って、骨の中に心棒となるスクリウを入れて固定しました。しっかり骨ができると ものをつまむ時ぐらぐらせずにしっかりとつまめるようになります。

手の伸筋腱断裂の写真です。同時に腱周囲の滑膜切除も行います。切れた腱は他の所から採取した腱を移植したり、他の指の腱を移行して再建します。手関節も破壊がひどいときは関節固定もおこないます。

患者さんにとって手術そのものも大変ですが、人工関節は術後の訓練や退院後の定期管理も重要になります。患者さん本人のがんばりで非常によくなることが多い手術です。
関節リウマチの手術はがんの手術のように、なるべく早く、絶対にしなければならないという手術ではなく、いろいろな治療のの1つなので、医師の説明を十分聞いて、自分自身納得して行うことが絶対必要です。そうして決心した手術は術後の訓練も頑張れるため良い結果になります。人工関節以外も全く同じです。

現在、国の重要な政策の一つとして、「社会保障・税の一体改革」がすすめられています。
この「社会保障・税の一体改革」には、私たちの生活や医療に関係する制度改革が多く盛り込まれています。
医療、介護、保育、年金、どれをとっても私たちの暮らしに直結するものばかりですが、非常にわかりにくく 理解するのをあきらめてしまいがちになると思います。
今日は、せっかくこのような機会をいただいたので、短い時間ですが、みなさんに関係のあると思われる部分だけでも 少し説明させていただけたらと思います。

政府はかねてからの深刻な少子化と高齢化、そして国の財政難を訴え、社会保障費の 削減を常々行いたいと言われていました。しかし、2011年安倍政権に代わってからその動きはなかば強行ともいえるかたちですすめられ、 社会保障費を消費税で賄うようにする、という考え方のもと、消費税の上昇と抱き合わせで社会保障の拡充を謳うようになりました。
それがこの社会保障と税の一体改革です。

医療・介護・年金と各分野に各法案が提出され順次決定されています。

まず、確認ですが、 医療費を軽減する制度では、1番よく知られている高額療養費制度があります。
年齢、職種によって加入する医療保険制度が違いますが、1割〜3割の自己負担が発生しています。
この自己負担も際限なくというわけではなく、1か月間において、自己負担限度額というものが決められています。
限度額を超えれば、越えた金額が支給されます。
申請先は保険者になります。2年間はさかのぼっての申請が可能です。

そして、現行の高額療養費の自己負担限度額表です。70歳未満、70歳以上で基準がわかれています。
所得に応じて3から4つの限度額の区分が設定されています。
高額な治療が3ヶ月以上続いた場合は[ ]内の金額に上限額が下がります。
2ヶ所以上の医療機関にかかり、それぞれ21000円を超えた額を支払ったり、家庭内でそれぞれが21000円を超える金額を支払った場合は 合算することができます。
次に70才以上の人の高額医療費の自己負担限度額表です。
70才未満の人とは違い、個人単位の限度額と世帯単位の限度額が設定されています。
負担限度額の区分においても非課税世帯の「T」と「U」が設定されています。
☆参考
・現役並み所得者・・・月収28万円以上の人、課税所得が145万円以上の人
             (窓口負担3割の人)
・市民税非課税「T」・・・年金収入80万円以下の人など「U」・・・「T」以外の市民税非課税世帯の人

では、ここからは、改革の影響をみていきたいと思います。
平成26年度4月に新たに70歳になる者から段階的に2割の負担となります。
平成26年3月末までにすでに70歳に達している者は、特例措置で1割で継続されます。
低所得者を含め、高額療養費の自己負担限度額は据え置かれます。

政府は、2015年(平成27年)1月から負担能力に応じた負担とする観点から、高額療養費の所得区分を細分化(5つの区分)して自己負担限度額をきめ細かく設定する予定です
上位所得、一般所得の段階をそれぞれ2段階にわけ、収入状況をさらに5段階にわけることで低所得者の負担を軽減するかたちを目指しています。

次に、特定疾患医療費制度が大きく変わろうとしています。
難病といわれる病のなかでも、これまでは国が定める特定疾患(56疾患) 小児特定疾患(11疾患 )に罹患した場合に医療費は公費負担となっていました。
「悪性関節リウマチ」は対象となりますが「関節リウマチ」は対象外です。
特定疾患の対象となるかは主治医にご相談いただくことになりますが、 手続きの窓口は各保健福祉センターになります。

現在の特定疾患医療費制度の自己負担額表です。
7つの階層に分かれ、入院、外来は別の設定になっています。
また、医療保険が「世帯」を単位に考えられているのに対し、「生計中心者」が「本人」であれば 負担額を軽減する仕組みも盛り込まれています。

現行の助成は法律に基づかない予算事業ですが、消費税の収入をあててより安定した制度にするとして、 疾患を増加することになります。一方でこれまで自己負担のなかった重症者にも所得に応じて負担をもとめ、 対象の病気でも軽症者は助成対象から外されます。 新制度では、医療費の自己負担割合を現行の3割から2割に減らした上で、所得に応じて月ごとの上限額を設定。
新たな助成対象者で、高額な医療費が継続してかかる重症者の場合、自己負担額は月2500円〜2万円
重症ではない一般の患者は月2500円〜3万円となります。 既認定者については3年間の経過措置があります。
医療保険の高額療養費制度などを参考に自己負担限度額を設定。さらに「世帯」単位で階層わけしています。

介護保険の内容と対象をおさらいしておきましょう。

ご清聴ありがとうございました。

今回のリウマチ教室に参加して頂いてる皆さんのほとんどが、月1回〜2ヶ月に1回診察されている方だと思います。
しかし、せっかくの診察でも、キチンと症状などを伝えなくては、正確な診断と適切な治療は受けられません。
自分に適した治療を受けるためには、身体の状態や日常の体調変化、例えば痛みの変化や体調不良があったこと、他科への受診などや、生活上の問題、例えば痛みのため歩行困難、家事動作に不都合、仕事に影響など、必要な情報を医師にしっかり伝えることが重要です。
そのための、いくつかのポイントについてお話します。

診察に来たら、まず受付にある問診票の記入をお願いします。 『問診票』は現在のリウマチの状態や勢い、治療の効果を評価するための大事な情報です。
「面倒くさい」「適当でいいわ」などと思わず、正確に記入してください。
記入方法に迷ったら、看護師にお尋ねください!!

次に診察時の準備です。
来院時には着替えやすい服装が理想的です。
上着は薄手の服1枚になり肘関節が見れるように、ズボンは膝関節がすぐ出るようにしてください。また、サポーター、湿布、包帯もはずして下さい。
靴と靴下を脱いで足関節が出るようにするため、スリッパにはきかえて下さい。スカート、ストッキング(色はベージュが良い)の方はそのままで大丈夫です。
リウマチの診察では触診がとても大切です。医師にしっかりと関節の腫れや、熱感、皮膚の変化などを診てもらいましょう。 医師の診察がスムーズに出来るようご協力をお願いします。

せっかく診察の来ても、緊張して聞き忘れたり、説明内容がよくわからなかったりして困ったことはありませんか?
そんな時には『メモを活用』しましょう!!
痛みが強くなった(いつから?きっかけは?)
体調の変化があった(いつごろ?どんな症状?)
質問、相談したいこと などなど・・・
メモして持参してください。 医師には聞にくいときは、看護師にお話してくださいね。

急に関節痛がひどくなった時の注意点についてお話します。
自己判断で内服量を調整したり、自己注射を頻繁に注射したりしないでください。(屯用の指示があるもの:ソレトンや エトドラクなどは除きます) 「内服薬を多くのんだ」「自己注射を多めに打った」などという声も聞くことがあります。
薬を医師の指示と違う使用方法に変えることは危険です。
痛みを取り除くことが望めないどころか、副作用の危険もあります。
困った時は、リウマチ科までお問い合わせください。看護師が対応いたします。

・風邪のような症状がある時(咳、痰、発熱など)
・吐き気があって食べられない、ひどい下痢をしている
・身体に出来た傷が治らず、膿んできている
・身体に発疹が出てきた
・倦怠感がある、口内炎が出来て痛い ・・・などなど
いつもと調子が違う時には、抗リウマチ薬の内服や、自己注射をしないでください!!
迷った時にはリウマチ科に問い合わせしてください!!

リウマチ科の診療時間内は、
 @リウマチ科に電話をして症状をお知らせください。
 A受診や内服の変更など、対応方法について説明します。
リウマチ科休診日(夜間、休日)は、
@他の病院を受診してください。(内服薬や生物学的製剤の使用がある場合は医師に忘れずに伝えてください)
 または、城北病院の救急外来を受診してください。
Aその後、一番近いリウマチ科の診療日に電話をし、症状の経過や診断名、処方薬などをお知らせください。
Bリウマチ科の内服の変更や点滴の予定日変更など、対応方法を説明致します

体調不良以外で城北診療所以外の病院にかかった場合は、必ず次の診察時にどんな症状でどんな薬が処方されたか、お知らせください。
お薬手帳には、お薬の大切な情報が記入されています。診察時には、手帳を医師に見せてください。
例えば、高血圧などで「他院で白い錠剤を処方されている」と言われても、色々な種類があります。
お薬手帳があれば、分かりやすいですね。
また生物学的製剤を使用している方には、お薬手帳に注射した日、注射をお渡しした本数などのシールを貼らせていただいています。

リウマチの薬には、飲み方が複雑なお薬もあります。医師も注意して処方していますが、量がいつもより少なかったり、多い量だったりすることがあります。
処方箋を会計でもらった時、確認する習慣をつけましょう。
「あれ?」と思った時は、ご面倒ですがリウマチ科まで問い合わせしてください。

最近、初診の方の診察が増えています。
リウマチ教室に参加して来院される方、患者さんのご紹介での来院される方、インターネット、TVで観て・・・色々です。
初診の方には
@電話にてリウマチ科の予約をしていただきます。
A医師の診察の前に看護師が問診しますので、症状や既往歴、内服薬などメモをしてきてください。
B他病院でリウマチ治療を受けている方は、紹介状を持参してください。もし、持って来れない場合は、検査結果やお薬手帳を持参してください。
C予約の患者さんの間に診察に入ることになるので、AM・PM半日空けて頂くことが必要です。
Dまれに混み合っているときは、お断りすることもあります。
皆さんも、患者さんをご紹介される場合は、以上のことを伝えてください。

他科(内科など)の予約も一緒にされている場合は、先にリウマチ科へ受診をお願いします。
他科での事前採血などがあり、受付で検査室での検査を案内される事がありますが、リウマチ科では、診察後に採血などの検査がある場合があります。何度も針を刺すことにもなりますので、受付をされたら、そのままリウマチ科までお願いします。

以上でお話は終わりです。
自分の病気や治療について理解し、考えることはとても大事なことです。今後も、リウマチ教室や診察に積極的に参加をして、リウマチを知ることが治療にとって大切なことです。
毎月第1金曜日に村山Drからと、リハビリや検査技師、薬剤師などの多職種の先生からの2本立てのリウマチ教室が開催されています。
年に2回、今日のような大きな会場でリウマチ教室が開催されています。
たくさんのご参加をお待ちしております。

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