B型肝炎
B型肝炎ウイルスの感染により肝障害を呈する疾患です。日本ではB型肝炎ウイルス保有者は150万人と言われていますが、その内、10%が肝炎発症します。しかし、95%は自然治癒しますので肝炎ウイルス感染者の5%が慢性肝炎になります。経過が良くなければ肝硬変や肝がんに進行するといわれています。自然治癒した状態をB型肝炎既感染者といいます。感染経路は血液を介して感染します。世界的に見てアフリカ、東南アジアに多く見られています。B型肝炎ウイルスは血液を介して感染します。かつては幼児期(7歳まで)の輸血による感染が多かったですが、現在では先進国では検査体制が確立した為ほとんど見られません。針刺し事故や覚醒剤注射の回し打ち・刺青での針の再使用などもあります。
日本では、戦後から昭和63年頃まで行われた幼児期の集団予防接種における注射針や注射筒の使い回しにより、HBVウイルスが蔓延した。国は昭和23年には注射針・注射筒の連続使用の危険性を認識していたが、40年にわたり使い回しの現状を放任していました。現在、推定150万人の持続感染者(キャリア)の内、集団予防接種による感染者は30%前後と言われており、この集団感染は2011年現在、裁判で係争中です。(Wikipediaより)

ウイルス感染の経過
B型肝炎に感染しますとB型抗原が(HBs抗原、Hbe抗原))が血液中に出現し、肝機能検査(GOT、GPT)が異常になります。その後、B型抗体(HBe抗体、HBc抗体、HBs抗体)が陽性になり、B型肝炎は治癒します。この状態は、体内からB型肝炎ウイルスが消失したこと示しており、B型肝炎既感染状態といいます。

B型肝炎の再活性化(de novo 肝炎)
B型肝炎が治癒した状態においても肝臓や末梢単核球中には微量のHBウイルス(HBV)の遺伝子が残っていることが判明しました。強力な化学療法(免疫抑制剤)などにより抵抗力が低下した際に急激なHBVの増殖を認めることがあります。

免疫抑制・化学療法により発症するB型肝炎対策ガイドライン
以上の経過から、関節リウマチ患者さんのように免疫抑制剤や生物学的製剤を使用する患者さんの場合には、これら薬剤を投与する際には、B型肝炎ウイルスの感染状況を検査しておくことが必要です。HBs抗原が陽性であれば、すぐ抗ウイルス治療を行い、治癒後、免疫抑制剤や生物学的製剤を使用します。B型肝炎ウイルス抗原陰性で抗体陽性の場合は頻回にB型肝炎遺伝子(HBV DNA)を測定することが必要で、陽性になればすぐさま抗ウイルス治療を開始します。

B型肝炎ウイルス再活性化症例のシェーマ
実際の患者さんの症例経過ではありませんが、治療経過を模擬的にお示しします。
患者さんはメトトレキサート(MTX)と生物学的製剤にて関節リウマチの治療を開始しました。B型肝炎ウイルス抗原(HBs抗原)陰性、B型肝炎ウイルス抗体(HBs抗体、HBc抗体)は陽性でB型肝炎既感染症例であることがわかります。生物学的製剤、MTX投与開始後862日に肝機能障害(GOT,GPT)が出現しHBs抗原が陽性化し、B型肝炎の再活性化が起こっています。ここで重要なことは、抗ウイルス剤投与を開始する前に慌ててMTXや生物学的製剤を中止しないことです。中止すると免疫機能が急激に回復して、増加したウイルスに対して大量のB型ウイルス抗体が産生されてしまい、劇症肝炎が発症してしまいます。
抗ウイルス剤投与にてHBs抗原が陰性になって肝機能が悪化再燃しないことを確認のうえで抗ウイルス剤を併用しながら関節リウマチ治療を再開します。

生物学的製剤で加療中の関節リウマチ患者に発生したB型肝炎ウイルスの再活性化に関する検討結果をお示しします。

関節リウマチ患者にみられたB型肝炎ウイルス(HBV)再活性化の実態
五所川原市立西北中央病院の浦田幸朋先生が2011年に516名の関節リウマチ患者さんを18か月間、HBV再活性化の実態調査を行った結果をお示しします。浦田先生によればRA患者516名中HBs抗原陰性患者は509名で、その内、157名(30.3%)がHBs抗体かHBc抗体陽性、すなわちHBV既感染の患者さんでした。18か月間の経過観察中HBV再活性化した患者が13名(8.3%)存在しました。。また、HBVの再活性化に関する解析では、生物製剤、エタネルセプト、〆トトレキサート高用量コルチコステロイド、タクロリムス水和物の投与が有意な因子として抽出された。

inserted by FC2 system