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関節リウマチの治療目標と治療手段 寛解といってもいろいろな寛解があります。下段にいくほど理想的な寛解といえます。 臨床的寛解とは、関節リウマチによる関節炎(滑膜炎)が消退している状態を示し、Treat to Target(目標を達成に向けた治療)で示されているように、早期に寛解あるいは低疾患活動性に到達できるよう、メトトレキサート(MTX)をはじめとするDMARDs(疾患修飾性抗リウマチ薬)や生物学的製剤を使用します。 画像的寛解とは、関節炎が治まっていても、関節破壊が進行する場合があります。生物学的製剤は関節破壊の進行を阻止する能力のある薬剤です。関節破壊の進行が止まっている状態が画像的寛解です。 機能的寛解とは、関節の機能、例えば、日常の生活動作が改善、あるいは、悪化が見られない状態を指します。そのためには、発症早期から積極的な治療が必要です。 薬剤フリー寛解とは、リウマチ治療薬を中止しても、上記3つの寛解が維持されている状態です。本当の意味での寛解ということが言えます。薬剤フリー寛解を得るためには、発症早期に生物学的製剤にて治療することによって可能となります。 最後に、関節リウマチが寛解しても、健常人と同様に社会生活が送れることが重要です。社会的寛解です。社会的寛解を得るためには、広義のリハビリテーション、ユニバーサルデザイン社会の実現が重要です。
ACR/EULAR新寛解基準2011 2010年のアメリカリウマチ学会(ACR)にて、ACRと欧州リウマチ学会の共同で関節リウマチの新しい寛解基準が発表されました。従来はDAS28による寛解基準が広く使用されていましたが、DAS28寛解基準は甘すぎるとの批判から、今回の新基準が提唱されています。 日常診療では、CRPの結果がすぐにでないので、CRPを除いた基準が利用されます。 そのひとつは、圧痛関節数)、腫脹関節数)、患者の全般評価,0-10cmのVAS)の全てが1以下、あるいは、 CDAI=腫脹関節数(0-28)+圧痛関節数(0-28)+患者の全般評価(0-10cmのVAS)+医師の全般評価(0-10cmのVAS)が2.8以下であれば寛解と定義します。この定義では患者さんも自分で寛解になっているのか判断することができて便利です。
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MRI検査と超音波断層検査(US) MRI検査は放射線を照射することなく磁気の共鳴の違いから骨・関節・軟部組織を描出する装置です。普通のレントゲン撮影では異常がない関節にもMRI検査では滑膜炎や骨破壊が証明されます。 USは装置がMRIと比べてかなり簡単なので手軽に検査が可能です。滑膜炎の存在が火焔状に表現されます。
MRI検査と超音波断層検査(US) MRI検査は放射線を照射することなく磁気の共鳴の違いから骨・関節・軟部組織を描出する装置です。普通のレントゲン撮影では異常がない関節にもMRI検査では滑膜炎や骨破壊が証明されます。 USは装置がMRIと比べてかなり簡単なので手軽に検査が可能です。滑膜炎の存在が火焔状に表現されます。
抗CCP抗体(ACPA) 抗CCP抗体は他のリウマチ診断のための検査法(IgMリウマトイド因子,IgGリウマトイド因子,ガラクトース欠損IgG)に比べて,感受性(陽性になる頻度)は同程度で,特異性(RA以外の疾患では陽性にならない)が高い検査法です(左上図)。また,初診時,RAとは診断できない関節炎患者を経過を追うと,抗CCP抗体陽性患者は高率にRAに進展しています(右上図)。さらに,抗CCP抗体陽性のRA患者は関節破壊が進行し予後不良です(下図)。 このように,抗CCP抗体は従来の検査法に比べて,診断,予後判定に,より感度のいい検査法です。
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抗CCP抗体(ACPA) 最近,リウマトイド因子に代わって抗環状シトルリン化ペプチド抗体(抗CCP抗体)が測定が出来るようになりました.リウマトイド因子に比べて関節リウマチ(RA)に特異的に出現(RA以外の疾患では出現しにくい)するといわれています.また,RAと診断が出来ないような早期にも陽性となり,抗CCP抗体陽性では関節破壊が高率に現れるといわれています.RAかどうか診断がつきかねる場合や早期から強力な治療の可否を判定する場合などに役に立ちます.
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検査結果の解釈 ・基準値は「正常な人の95%が当てはまる値」と理解して下さい。なお現在では「正常値」という用語は好ましくないとされあまり使われていません。 ・基準値は検査方法、機器の種類、試薬の種類などによって、微妙に異なってきます。 ・基準値の範囲を超えていても直ちに病気と考える必要はありません。 ・たとえば、検診などで肝機能検査に含まれる検査値の異常も直ちに肝機能の異常を示すものではありません。他の病気、他の臓器異常でも異常値を示す場合があります。 ・診察時に渡される検査結果は大切に保管しておいてください。各検査値の変動をみたり、他の医療機関を受診する際には役に立ちます。
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Sharp法は骨びらんと関節裂隙狭小化をスコア化する評価法 1971年にSharp らにより提唱されたSharp法は、手および手首の骨びらんと関節裂隙狭小化のスコアから関節を評価する方法で、現在、臨床試験などにおいて頻用されています。 骨びらんの関節裂隙狭小化に関し、当初は27ヵ所を評価する方法でしたが、その後、評価箇所などについて改訂を加えたものがいくつか発表されています。 現在では、足も評価対象として加えたvan der Heidjeによるmodified Sharp法1がもっともよく使われています。 エンブレルのTEMPO試験では、van del Heijde 1989年の方法2を一部変更して、骨びらんスコアは左右の手16関節ずつ、左右の足6関節ずつ、関節裂隙狭小化スコアは左右の手15関節ずつ、左右の足6関節ずつを評価する方法が用いられています。 ※関節裂隙:かんせつれつげき ?
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実際の診察室にて関節の圧痛、腫脹の有無を評価しているところです。
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リウマチの活動性の評価法 関節リウマチの活動性を評価するためには、関節の圧痛関節数、腫脹関節痛、患者自身による全般評価、医師による全般評価、血液検査による炎症反応などを組み合わせて行います。 評価する関節は、手指PIP関節(先から2番目の関節)、MCP関節(先から3番目の関節)、手、肘、肩、足趾MTP関節(指の付け根の関節)、足、膝関節の28関節が主に利用されます。 患者による全般評価は、その患者が今までに経験したリウマチが最悪の状態を10として、それから見た現在の状態を記録します。 それぞれどの項目を利用するかによってDAS28,SDAI,CDAIなど様々な評価法が利用されています。
関節評価シート これはリウマチ外来で患者さんが来診毎に記入していただいている関節評価シートです。左半分が表面で医師が記入するページです。右半分が裏面で患者さんが記入するページです。 医師記入欄は、□部分の関節の腫脹と圧痛を記入し、腫脹関節数と圧痛関節数を数えます。その下にある10cmの横棒は医師による総合評価(右端が疾患活動性が最も高く、左端が最も疾患活動性が低い)を記録します。 患者記入欄は、mHAQというもので日常行われる動作の困難さを表しています。その下にある10cmの横棒は患者さんによる疼痛と病気全般の状況を記録します。医師による総合評価と同様に右端がこれまで闘病中に経験した中で一番、疼痛や病気が悪い状況を示しています。左端は全く痛くないか、病気が完全によくなってる状態を示します。ここで注意していただきたいのは、あくまでRAの状況についての調査ですので、腰痛や風邪などRA以外の状態は考慮に入れないでください。
これは、トシリズマブ(アクテムラ、TCZ)のACR改善率から見た臨床試験の成績です。
ACR20改善率 アメリカリウマチ学会(ACR)が定めた関節リウマチの薬物試験の改善評価方法です。68関節あるいは28関節で評価されます。ACR20%改善というのは、圧痛関節数と腫脹関節数が薬剤投与前の20%以上改善し、かつ、患者の疼痛、患者及び医師の疾患活動性の全般評価(10cmの評価法、VAS)、患者の身体機能評価(日常生活動作のアンケート、HAQ)、急性期反応検査の5項目の内、3項目以上が20%以上改善していることを示します。ACR20改善を達成した患者の割合をACR20改善率として表します。同様に、50%以上改善した患者の割合はACR50、70%以上改善した患者の割合はACR70と表現します。
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ランダム化比較試験 ランダム化比較試験とは,治験対象患者を治療群と非治療群に乱数表などを使って無作為で割付をします.その際,対象患者さんの年齢,性,病歴などに差がないように割付がなされていることが確認されなければなりません.次に,治療する医師,治験される対象患者さんに本薬と区別(色,形,匂い,味など)がつかない偽薬(プラセボー)を用意して治験を開始します.半数の患者さんにプラセボー治療をおこなうことになるわけですから,試験の内容,意義について治験対象患者さんから同意(インフォームドコンセント)を得ることは必須です.このような準備をしたうえで客観的に確立された評価方法を使って試験を行い,統計学的手法を用いた評価解析を行い,プラセボー群に比較して統計学的差をもって治療群が有効であれば科学的に有効性が証明された治療法となるわけです.
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有効性,安全性を証明するためにはランダム化比較試験が必要 多くの代替医療は,その治療法をおこなったら結果的に良くなったという少数例の経験をもとに報告されたり,特定の権威者の個人的経験から導かれた意見に基づいて,その有効性を宣伝しています.科学的にその治療法の有効性を証明するためには,その治療法をしなかったら改善しなかったという証拠も必要なのです.
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関節リウマチの評価法 関節リウマチ(RA)の状態を評価することは治療方針の変更や日常生活の注意などで非常に大切になります.RAの評価は複雑で血液検査やレントゲン検査だけでは正確な評価をすることは困難です. RAの評価は大きく分けて2つあります。第一は現在の関節炎状態を把握するもので、第二はこれまでのRAの経過、治療結果をみる指標です。 関節炎の状態を評価するためには、患者さんから得られる情報(主観的評価や半主観的評価)が主なものです。RAの経過、治療結果をみる評価は主に様々な画像検査を行い医師が判定するものです。